おすそがかゆいです

デリケートゾーンのトラブルは、なかなか人に相談できないこともあるかと思います。おすその部分を外陰部と言います。また、おすその中の部分を腟と言います。そして、おすそのかゆみのことを専門用語で外陰部掻痒感という言葉を使います。ここでは外陰部掻痒感の原因、検査、治療などについて説明していきます。

この記事のまとめ

①おすその洗いすぎに注意

②外陰部の見た目の変化・おりものの異常がないか等確認します

③これからの時期、カンジダによるかゆみが増えてきます

腟内は、常在菌である乳酸菌(Lactobacillus)によって、酸性に保たれています(乳酸の生成による)。酸性環境に弱い病原体の侵入や増殖を防いでおり、腟の自浄作用と言います。おすそを清潔に保とうと、腟内まで念入りに洗う人や石鹸でゴシゴシと洗ってしまう人がいます。そのことで常在菌も洗い落としてしまうことになり、腟の自浄作用が破綻してしまい、感染を起こしやすい状態になってしまいます。

また外陰部においても、他の部分の皮膚でもゴシゴシ洗いすぎて荒れてしまうと思いますが、おすその場合はデリケートですので、なおさら注意が必要です。この場合は皮膚の一番外側のバリア機能のある角質層が破綻することや皮膚常在菌が洗い落とされてしまうこと等で皮膚は荒れてしまいます。

ちなみに人間の体には色んな常在菌がいます。今紹介した腟内常在菌・皮膚常在菌、最近話題の腸内細菌など様々あります。基本的には人の体の空気と接している部分(外側であれば皮膚など、内側であれば消化器など)には、だいたい常在菌がいます。菌と聞くと、悪さをするんでないかとか、何となく不潔と思われる人もいるかと思いますが、常在菌は基本的には良い菌です。常在菌によって、他の病原体からの侵入を防いでくれたりしています。また、常在菌から分泌される物質が、人間の体に良い効果をもたらせてくれているものが見つかったりしているようです。とくに最近では、腸内細菌がとても見直されていて、様々な研究発表がされていて興味深いです。人間は菌との共存が大事なようです。

外陰部がかゆくなる原因として、カンジダ・トリコモナスなどの感染症、湿疹・接触性皮膚炎などの皮膚疾患、女性ホルモンであるエストロゲンの低下による萎縮性腟炎、稀ですが外陰部癌、また糖尿病・膠原病などの全身疾患などあります。カンジダはジメジメした環境を好むため、これから暑くなる時期に多くなるので要注意です。生理用品(とくに生理用品を今まで使っていたものから変えた場合に多い)による刺激、下着に残った尿・便、異物等によって接触性皮膚炎が起こったりします。

また、女性ホルモン(エストロゲン)には腟の自浄作用や皮膚環境を整えるのに重要ですが、加齢によって女性ホルモン(エストロゲン)が低下して、腟や外陰部に炎症が起こることがあります。

おすそがかゆい人が来たら、まず外陰部・腟内を見て(視診)、かゆい部分に何か変化がないか確認します。次におりものを採取して顕微鏡で何か原因となっているもの(とくにカンジダ・トリコモナスなど)がないか確認します。原因が感染の場合、カンジダであれば抗真菌薬を使い、トリコモナスであれば抗生剤・原虫に効く薬を使います。女性ホルモンの低下であれば、エストロゲン製剤を使います。接触性皮膚炎であれば、軟膏を調整したり、スキンケアに加えて、そうなってしまう原因を除去することが大事です。

流産について

妊娠して幸せモードの中、赤ちゃんが残念ながら流れてしまうことがあります。精神的ショックも大きいものです。中には流産を何回も繰り返してしまう人もいます。偶然が重なっている場合と何かしら原因が隠されている場合があります。それらについて説明していきます。

この記事のまとめ

①流産する確率は意外と高い

②原因はわかるものもあるが、原因不明の場合も多い

③原因がわかっても対応できないものもある

まずは、自然流産率は約15%程度と言われています。計算すると6-7回妊娠すると1回流産を経験することになります。しかも年齢とともに流産率は高くなり、40歳の流産率は約40%程度です。日々の診療で、妊娠する人を何人もみているので、流産に出くわす機会は意外と多いです。ただし、患者側からみると、流産は精神的にも肉体的にもとても負担が重いものです。なんで私が流産になるの?、あの時にしたことがいけなかったのではないか…とあれこれ思ったり、時には自分を責めたりします。場合によっては、周囲から言われのないことや、ひどいことを言われることもあるようです。僕らは、流産率が意外と高いことを知っているので、流産はある一定確率で経験してしまうことであることを、本人・パートナーに説明します。とくにパートナーの役割は重要で、周りからの言葉の攻撃に対して守ってやることが大事だと思います。

不育症とは、妊娠はするが流産・死産を繰り返して生児が得られないものを指します。流産を2回繰り返す確率は理論上は0.15×0.15で2.25%ですが、実際の頻度は約4.2%です。流産を3回繰り返す確率は理論上は0.15×0.15×0.15で0.34%ですが、実際の頻度は約0.9%です。そこまでくると偶然の確率で流産が重なったというより、何かしらの原因がある場合があるのではないかと判断して介入していきます。ちなみに流産を2回繰り返すことを反復流産、3回以上連続するものを習慣流産といいます。また、不育症において流産の回数の明確な規定はないですが、実際には2回以上流産を繰り返す場合は不育症として何かしらの介入を行うことが多いです。

原因については、子宮の形の異常(先天的な子宮形態異常、子宮筋腫など)、妊娠を継続するためのホルモン分泌異常、血栓という血液のかたまりが出来やすくなる(血液のかたまりによって赤ちゃんへの血流が不十分となって流産となってしまう)抗リン脂質抗体症候群・偶発抗リン脂質抗体など、自己免疫疾患、夫婦染色体・胎児染色体異常などあります。 血液検査(ホルモン・抗リン脂質抗体症候群・自己免疫など)、超音波検査・MRI・子宮卵管造影・子宮鏡検査などで子宮の形の評価をしたりして不育症の原因がないか検査します。染色体検査は基本的には遺伝カウンセリングの出来る専門医療施設で行います。ただし、残念ながら各種検査をしても原因を特定できないことが多い(50%以上は原因は特定できない)です。

原因が判明した場合には、それに応じた治療を行います。例えば、血液がかたまりやすくなるのものであれば、血液をサラサラにする薬(低用量アスピリン、ヘパリン併用療法など)、子宮の形の異常であれば手術で形を整えたりします。ただし、染色体異常に関しては根本治療がないのが現状です。そして、原因が特定できない習慣流産に対する確率された治療法は残念ながらないです。低用量アスピリン療法を行う場合はありますが効果は限定的です。

母乳について

赤ちゃんへの栄養方法として、母乳・粉ミルクなどあります。最近では液体ミルクも登場しております。病院によっては、母乳栄養を積極的にすすめている所もあり、ユニセフでも母乳育児を成功させるための10ヵ条というものも出ており、基本的には母乳育児が国際的にも推奨されております。ただ、どうしても母乳が出なかったり、乳頭が傷だらけになっている人もいてあり、母乳育児の大変な部分もあります。最近では、産後積極的に働く女性も増えており、どうしても粉ミルクになってしまうこともあります。 ここでは、母乳の利点・欠点や赤ちゃんへの栄養方法の歴史について紹介したいと思います。

この記事のまとめ

①母乳栄養に利点と欠点がある

②赤ちゃんへの栄養方法は社会の変化とともに変わっている

③子育ては大変

母乳は、産後の時間経過とともに成分が変化していきます。最初は初乳といって混濁した黄色の液体で免疫物質・蛋白質・電解質を多く含み、赤ちゃんが免疫を獲得するのに優位になっております。徐々に成分が変わり移行乳を経て成乳となります。成乳の成分は、脂肪や糖を多く含みエネルギーが高くなっています。

母乳の利点として、赤ちゃんの栄養・免疫獲得、子宮復古(乳頭刺激によって産後子宮の回復を促すホルモンが分泌される)、ミルク代がかからない、なんといっても授乳のスキンシップにより健全な母子関係が形成されるなどあります。ただし、母乳も完璧ではなく欠点ともあり、栄養のうちビタミンK・鉄分が不足していること、母乳性黄疸が出ること、母親に感染症(HIV、HTLVなど)がある場合母乳を介して赤ちゃんにも感染する可能性があること、母親が飲んでいる薬がある場合薬剤移行すること(ほとんどの薬は移行しても濃度がごく低く影響は無視できる程度ですが、一部抗癌剤や免疫抑制剤など強い薬は注意が必要です)、乳房トラブルなどあります。栄養に関していうと、ビタミンK欠乏で出血傾向となる可能性があるので、赤ちゃんにはビタミンK入りのシロップを投与する必要があります。

赤ちゃんへの栄養の歴史をみていくと、昔から自分の子供に授乳するのが一般的でした。古代文明時代から、乳母の存在が記載されているようです。高貴な身分の人は、乳母を雇って自分の子供に授乳させていたようです。ベビーシッターが授乳もしてくれるイメージでしょうか。そして、15世紀頃の大航海時代の西洋では、貿易業務を中心として労働環境が厳しい状態となり、定期的に授乳が出来ない環境だったようです。そんな中、赤ちゃんに牛・羊の乳を与えるようになりました。ただし、牛・羊の乳による様々な問題が浮上してきて、母乳が主流に戻っていったようです。

社会背景の変化により人工乳のニーズが高まり、19世紀から20世紀にかけて、多くの人工乳の開発生産がされました。19世紀にはDryNursingと呼ばれる、小麦・シリアルをブイヨンや水で溶いたものが使用されていました。1860年代に、アンリ・ネスレ(ネスレの創始者)が小児用ミルクを開発しました。ただ、当時の人工乳は、栄養学的な欠陥が多く、衛生的な問題もあり、人工乳で育てられた児の死亡率は高くなっていました。また、日本では伝統的に産婆による自宅出産・授乳による育児が主流でしたが、1950年代から病院・産院での出産が増加するとともに、粉ミルクブームとなりました。

こうした中、1970年国連は国連が初めて人工乳の販売活動を問題に取り上げました。1974年には「ネスレは赤ちゃんを殺す」としたネスレ訴訟が起こったりしました。WHOや厚生労働省で母乳栄養推進運動が推進されました。ちなみに「母乳育児を成功させるための10カ条」が掲げられ国際的にも母乳育児が推奨される流れとなっています。だいたいの産婦人科の待合いに貼ってあるのを見たことがあるかと思います。

そして最近液体ミルクが日本でも販売されるようになりました。値段は少し高めですが、災害時にお湯が使えない状況や哺乳瓶を十分に消毒できない場面では、とても重宝されます。すぐに飲ませることが出来るので、粉ミルクのようにお湯入れて、溶いて、人肌に冷ましてという手間がないです。

自分も子供が出来て、妻が夜もおっぱいするのに何回も起きたり、眠い目を擦りながら粉ミルクを作ってあげているのを見ていると、母親の偉大さをひしひしと感じます。頭があがらないです。夜の当番でお産などで呼ばれると、だいたいの産後部屋から赤ちゃんの鳴き声が聞こえたり、授乳室は明るくなっているのを見ます。奮闘している母親に頑張れと思いながら、お産対応をしたりしています。

妊活について

ここ最近、晩婚化の影響を受け、妊娠出産する年齢が高くなってきております。そんな中、自分は妊娠する体なのだろうかと心配している方もいるのでないかと思います。妊娠活動について解説していきたい思います。

この記事のまとめ

①妊娠するには女性だけでなく男性の協力も必要

②妊娠するための検査でわかることもあるが、わからないこともある

③まずはタイミング療法から開始して、妊娠成立しにくければ治療のステップアップをしていく

まず、妊娠するためには性交渉を行う必要があります。性交渉をして、卵子と精子が1周期にタイミングよく出会い受精し、子宮内に着床し妊娠が成立します。1回の性交渉(1周期)で妊娠する確率は約30%程度と言われており、加齢とともに伴って妊娠率は低下していきます。理論的には、周期を重ねるごとに確率は蓄積していき、5-6周期で約80%程度が妊娠し、12周期(1年間)で約99%程度が妊娠します。逆に妊娠が成立しない場合は、何らかの妊娠しにくくする原因があることが考えられます。ある一定期間(1-2年程度)性生活を行っているにも関わらず妊娠の成立をみない状態のことを不妊症といいます。不妊症と聞くと何かしらの病気でないかと心配する人がいますが、あくまでそういった「状態」であることを示すのみです。不妊症とつくと自治体によっては助成金などの支給があったり色々と便宜上良いこともあります。

また、晩婚化やライフスタイルの多様化によって、不妊治療を希望する理由は様々あります。例えば、夫と仕事の時間帯が合わず性交渉できないために人工授精などを希望する人がいたり、年齢が高く後がないから早く子供を授かりたい人や、同性婚でも子供が欲しい方、何となく周囲からの噂を聞いて不安になって受診する人など様々います。

「子供が欲しいです」となった場合、まずはタイミング療法を行います。これは排卵期近くで性交渉してもらうことです。これを1年間繰り返すと理論上は約99%妊娠が成立します。実際には3-6周期くらい(5-6周期程度で確率的には頭打ちになるため)タイミング療法をおこなって妊娠成立しない場合は、人工授精・生殖補助医療(体外受精-胚移植など)などステップアップしていく流れが多いです。ただし、一刻も早く子供が欲しい人には、それよりも早くにステップアップなどしていく場合があります。

排卵のタイミングは、通常の月経周期では月経が来てから14日目前後が多いです。診察では、エコーで卵胞の大きさをみて排卵時期を判断するのが確実です。他に、頸管粘液の性状、LHというホルモン検査、子宮内膜の性状、基礎体温の変化などみて、排卵時期を判断していきます。排卵の前後24時間程度に性交渉するのが妊娠しやすいと言われております。

妊娠しにくくする原因は、女性因子(排卵因子・卵管因子など)、男性因子、男女複合因子、その他、原因不明な因子などあります。男性因子の場合もあるため、パートナーによる協力も必要不可欠で、検査を受けてもらうことが重要です。
実際にはタイミング療法と並行して、原因をさぐるために検査もおこなっていきます。血液検査(ホルモン、甲状腺機能、インスリン抵抗性など)、おりもの検査(クラミジア・淋菌など)、画像検査(超音波検査、子宮卵管造影)、男性の精液検査など行い不妊の原因がないか検査します。ホルモン検査は月経周期に応じて行う項目もあります。その中で治療可能なもの、是正可能なものがあれば、治療していきます。また、妊娠した後のことを見越して、子宮頸癌検診・風疹抗体検査・血圧・一般的な内科疾患に関する検査など行います。禁煙・禁酒の指導、体重コントロール、葉酸摂取の指導なども行います。

検査異常に対する治療に関しては、例えば、クラミジア・淋菌などあれば抗生剤で治療したり、排卵障害があれば排卵誘発剤を使用したり、高プロラクチン血症があればプロラクチンを改善する薬を使用したりします。精子や受精卵の通り道の異常、例えば卵管が狭窄閉塞しているようであれば卵管鏡手術もしくは体外受精-胚移植を行ったり、子宮頸管通過障害があれば人工授精・体外受精-胚移植を行ったりします。受精卵の着床する子宮内腔の異常、例えば子宮筋腫・子宮形態異常・子宮内腔癒着などあればそれらに対する手術が必要となる事があります。精液異常があればパートナーの泌尿器科への受診などをすすめます。なお、日本国内では、胚提供や代理懐胎などは認められておりませんので、それらを希望する人は海外で不妊治療を受ける人もいます。

妊娠中の食について

妊娠すると、まわりから「妊娠したら薬は飲んじゃいけないよ」とか、「妊婦だから、これは食べてはいけないよ」とか、「このサプリメントは妊娠中に良いんだよ」とか様々な情報にさらされるようになります。全く根拠のないものから、迷信みたいなこと、まことしやかな噂話のようなものまで様々あります。ここでは、根拠があることについて解説していきたいと思います。

この記事のまとめ

①妊娠中、注意すべき食べ物を把握しておく

②薬・漢方など飲んでいる場合は、薬手帳を持って医師に相談を

③アルコールは妊娠がわかった時点で控えるのがよい。カフェインも控えるのがよいが、飲むとしてもほどほどに

妊娠中に注意が必要な食べ物としていくつか知られています。たとえば、ナチュラルチーズ(加熱殺菌されてないもの)、肉や魚のパテ、生ハム・スモークサーモンなどでリステリア食中毒となる可能性があります。馬刺し・牛刺し・レバ刺しなど十分な加熱されていない肉を食べるとトキソプラズマ感染となる可能性があります。また、トキソプラズマは猫との接触(猫の糞にトキソプラズマ含まれています)でも感染する可能性があります。しっかりと加熱された食べ物を選び、生ものにはとくに注意が必要です。妊娠中でなくても、生もの(BBQ・焼肉で生焼けには注意)で食中毒になったり、刺身でアニサキスになってしまったりすることもあるくらいなので、妊娠中は食事に伴うそういったリスクはなるべく避けるよう努めるのが良いと思います。

薬に関していうと、胎盤を通して母親から摂取された薬剤の成分が赤ちゃんに移行します。とくに妊娠4-12週は器官形成期といわれ催奇形性に注意が必要です。妊娠12週以降は、胎児機能(臓器機能や発育など)への影響を与える胎児毒性に注意が必要です。基本的には妊娠中でも安全に使える薬(胎盤を通じて赤ちゃんに移行しても、移行する薬剤濃度は低く、その影響は無視できうる程度のもの)が多いですが、中には催奇形性・胎児毒性など有するものもあります。持病で定期的に飲んでいる薬などあれば、薬手帳を持って、かかりつけ医師に相談することが必要です。急に不安になって、定期の薬をやめてしまって持病が悪化することもあります。赤ちゃんが順調に育つには、母親の健康状態が前提だと考えてください。持病の薬の継続・中止に関しては、そのかかりつけ医師と相談してください。妊娠によって病状が悪化する病気や、コントロールできていなければ妊娠自体許可できない病気などもありますので、必ず医師に確認してください。

サプリメントに関しては、市販のものがたくさんあり、妊娠に関して有益なことがわかっているものもあります。例えば、葉酸は妊娠1カ月以上前から妊娠3ヶ月まで1日400µg摂取することで、胎児の神経管閉鎖障害を予防できると言われております。鉄剤は、妊娠期間中鉄欠乏性貧血になりやすく、貧血予防のため摂取は望ましいです。ただし注意が必要なサプリもあります。ビタミン剤は、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)は摂取しすぎないよう注意が必要です。とくにビタミンAの過剰摂取により胎児先天奇形の報告があります。サプリメントは飲むとしても用法用量を必ず守って、過剰摂取とならないよう注意が必要です。

コーヒー・紅茶などに含まれているカフェインに関しては、カフェイン600mg/日以下では流早産・新生児死亡率への影響なしという報告があったり、カフェイン1500mg/日以上を毎日飲むと先天異常の可能性が上昇するという動物実験があったりします。コーヒー1杯(100ml)には約60mgのカフェインが含まれています。 また、アルコールは胎盤を通過し胎児へ影響します。アルコールの多量摂取により、胎児性アルコール症候群(胎児期より始まる発達障害、特徴的な頭蓋・顔つき・手足、心血管異常など)をみとめる場合があります。1日1杯程度であれば、アルコールを毎日摂取しても問題ないとする報告があったり、アルコール依存で毎日多量に摂取することがなければ大丈夫という白人における報告もありますが、日本人に関してはデータが十分でなく正直判断つかないです。この手の問題に関しては、大規模な介入研究が出来ないため(妊娠中に毒性をもつ可能性のある物質の投与は倫理的問題があって積極的にすすめられないという背景もあり)、実際のところよくわかってません。カフェイン・アルコールは嗜好品なので、ただでさえ色々と制約のある妊娠中に今までコーヒーやお酒を楽しんでいたのに控えなければならない場合ストレスがかなりかかってくるかと思います。リスクがあるかもしれないことを避けることは大事ですが、個人的には、1日1杯程度のコーヒーや、たまの機会に1-2杯程度飲酒してストレスを溜めないようにするのは良いのかなと思っています。

おまけですが、妊娠中に氷を好んで食べるようになる人がいます。氷食症といって、鉄欠乏性貧血の一症状として現れることがあります。妊娠期間中は貧血になりやすいので、鉄分の多い食材を使った食事を心がけて下さい。また、氷食症以外にも、全身倦怠感・めまい・動くとすぐに疲れる等貧血症状が強いようであれば、かかりつけに受診し、血液検査で貧血をチェックしてもらいましょう。

妊娠中の旅行・移動について

妊娠中とはいえ、旅行を楽しみたい方もいるかと思います。また夫の転勤などの都合で、どうしても飛行機移動しなければならない状況もあるかと思います。そういった時に、どうすればいいか説明していきたいと思います。

この記事のまとめ

①妊娠中は何が起こってもおかしくない

②移動前に診察受けておくべし

③移動の際には、1.母子手帳持つ、2.無理のない計画を、3.渡航先で受診可能な医療施設を調べておく

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「先生、安定期に入ったので旅行に行ってきてもいいですか」と言ってくる妊婦さんは多いです。安定期は一般的に妊娠12-16週以降を指すことが多いようですが、何か起こる可能性はあります。地域によるルールもあるかと思いますが、基本的には妊婦さんが何かあった時には、かかりつけ(小さなクリニックなどでは提携している医療機関)に受診することが原則です。なので、遠方で何かあっても、かかりつけの受診は不可能なので、基本的には長距離移動は僕ら産婦人科医がすすめることはありません。何か起こるかもしれないリスクと旅行で楽しむというメリットを天秤にかけた上で、自己責任で判断して頂くよう説明しています。

ただし、夫の転勤などの都合で、どうしても飛行機移動しなければならない状況もあるかと思います。長距離移動が必要になった場合やどうしても旅行に行く場合、注意する点など説明していきます。

移動する前には、かかりつけの医療機関を受診して診察を受けてください。出来ればこれから長距離移動が必要なことを伝え、経腟エコー(下からのエコー検査)で子宮の入り口の長さ(頸管長)も測定してもらってください。

移動の際は、何かあった時に備えて必ず母子手帳は持参してください。受診する医療機関に情報が伝わるように、出来れば、検査結果の紙や赤ちゃんの推定体重など情報の入ったエコー写真なども母子手帳に一緒に挟んであると、なお良いです。

また、妊婦さんは普通の人に比べて血栓という血が固まってしまいやすい状態になっています。なので、航空機で長距離移動する際に深部静脈血栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)を予防するために、適宜水分補給して脱水予防に努めること、座席でも出来る簡単な運動等(航空会社によっては冊子に書いてあります)して予防することが大事です。

また、妊婦さんが長距離歩いたりするのは大変ですし、それでお腹が張ったりしまうこともあります。くれぐれも無理のない計画でいきましょう。そして体調がすぐれないようであれば、早めに切り上げてくる勇気を持つことも大切です。渡航先でお腹が張ってしまって、切迫早産となって長期入院が必要となって、帰れなくなってしまった妊婦さんもいます。 渡航先によっては、周産期当番など決まっておらず、急な妊婦さんの受診は断られてしまう場合があります。場合によっては、たらい回しにされてしまうこともあります。

また、海外では医療システムの違いがあり、高額な医療費を請求される可能性もあります。 航空会社によりますが、妊娠週数によって医師の同意書が必要な場合や医師の同乗が必要な場合等あり、あらかじめ利用する航空会社に問い合わせしておくのが良いでしょう。なお、主要な国内線では、妊娠36週以降(分娩予定日の28日以内)は医師の診断書が必要、妊娠39週以降(分娩予定日の7日以内)は医師の同伴が必要と規定されている所が多いです。

基本的には妊娠中の長距離移動はおすすめしません。何かしらの事情で長距離移動が必要となった場合は、自分とお腹の赤ちゃんを守るためにも、しっかりとした準備をしてください。

妊娠したかも!と思ったら

妊娠したかもと思ったらどうすればいいか説明します。

この記事のまとめ

①生理の遅れは妊娠のサインかも

②産婦人科受診や市販の妊娠検査薬を使用して確認を

③妊娠反応陽性は正常妊娠以外のこともあり

まず妊娠すると、月経(生理のこと)は止まります。そして人によっては、妊娠の早い時期から、つわり(吐き気などの症状)・乳房の張る感じ・下腹部痛などが出現することもあります。 なお、性交渉時にコンドームなどで避妊していても、ある一定確率で妊娠することもあり注意が必要です。(避妊方法に関しては別記事参照) なお、元々月経が不順な人の場合、妊娠なのかどうか判別がしにくいこともあります。少しでも妊娠の可能性があるなと思ったら、産婦人科を受診したり、市販の妊娠検査薬で調べることが大事です。

妊娠をするとhCGというホルモンが分泌されます。市販の妊娠検査薬では、尿の中にそのhCGが含まれているか検査します。hCGが含まれていた場合に陽性(妊娠反応陽性)となります。だいたいの妊娠検査薬では、判定のラインが出てきたときを陽性と判断します。産婦人科を受診した場合も、ほとんどの場合、尿を採ってもらい同様の検査を行います。場合によっては血液検査でhCGを調べる事もあります。

ちなみに、普通の人は妊娠反応陽性=正常妊娠と考えてしまうと思いますが、実は正常妊娠以外のこともあります。たとえば、以前子宮外妊娠と言われていた異所性妊娠(子宮内以外の部位に着床してしまう状態)・流産・その他特殊な稀な病気(hCG産生腫瘍、胞状奇胎など)の場合があります。 とくに流産は意外と頻度が多く、約15%程度と言われており、6-7回妊娠したら1回は経験する計算になります。妊娠年齢が上昇すると、流産率も高くなります。子供が出来て幸せと思っていたところ流産とわかることもたびたびあり、精神的なダメージは大きいものです。 また、異所性妊娠は見逃してはいけない病気です。とくに妊娠成分が大きくなって破裂してしまった場合はお腹の中で大量出血してしまい、場合によっては命を落とす可能性もあります。

妊娠のごく初期の場合、赤ちゃんの袋が十分大きくなっておらず、正常妊娠なのか流産なのか異所性妊娠なのかを1回の受診で診断することは難しい場合があります。とくに月経不順で排卵時期のズレが想定され、妊娠週数計算のズレもありそうな場合は難しいです。その場合は、1-2週間程度(異所性妊娠を強く疑う場合はもっと早めに受診して頂くこともあります)の間隔をあけて受診して頂き、エコー検査で赤ちゃんの袋が見えてくるかの確認または大きさの変化を確認したり、場合によっては先ほど説明したhCGの推移を血液検査で確認して判断していきます。

とくに異所性妊娠は命を落としうる病気なので、医師から次回の受診指示があった場合は必ず受診することと、急激な腹痛があった場合は次回受診まで待たずにすぐに病院に受診してください。

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