デリケートゾーンのトラブルは、なかなか人に相談できないこともあるかと思います。おすその部分を外陰部と言います。また、おすその中の部分を腟と言います。そして、おすそのかゆみのことを専門用語で外陰部掻痒感という言葉を使います。ここでは外陰部掻痒感の原因、検査、治療などについて説明していきます。
この記事のまとめ
①おすその洗いすぎに注意
②外陰部の見た目の変化・おりものの異常がないか等確認します
③これからの時期、カンジダによるかゆみが増えてきます
腟内は、常在菌である乳酸菌(Lactobacillus)によって、酸性に保たれています(乳酸の生成による)。酸性環境に弱い病原体の侵入や増殖を防いでおり、腟の自浄作用と言います。おすそを清潔に保とうと、腟内まで念入りに洗う人や石鹸でゴシゴシと洗ってしまう人がいます。そのことで常在菌も洗い落としてしまうことになり、腟の自浄作用が破綻してしまい、感染を起こしやすい状態になってしまいます。
また外陰部においても、他の部分の皮膚でもゴシゴシ洗いすぎて荒れてしまうと思いますが、おすその場合はデリケートですので、なおさら注意が必要です。この場合は皮膚の一番外側のバリア機能のある角質層が破綻することや皮膚常在菌が洗い落とされてしまうこと等で皮膚は荒れてしまいます。
ちなみに人間の体には色んな常在菌がいます。今紹介した腟内常在菌・皮膚常在菌、最近話題の腸内細菌など様々あります。基本的には人の体の空気と接している部分(外側であれば皮膚など、内側であれば消化器など)には、だいたい常在菌がいます。菌と聞くと、悪さをするんでないかとか、何となく不潔と思われる人もいるかと思いますが、常在菌は基本的には良い菌です。常在菌によって、他の病原体からの侵入を防いでくれたりしています。また、常在菌から分泌される物質が、人間の体に良い効果をもたらせてくれているものが見つかったりしているようです。とくに最近では、腸内細菌がとても見直されていて、様々な研究発表がされていて興味深いです。人間は菌との共存が大事なようです。
外陰部がかゆくなる原因として、カンジダ・トリコモナスなどの感染症、湿疹・接触性皮膚炎などの皮膚疾患、女性ホルモンであるエストロゲンの低下による萎縮性腟炎、稀ですが外陰部癌、また糖尿病・膠原病などの全身疾患などあります。カンジダはジメジメした環境を好むため、これから暑くなる時期に多くなるので要注意です。生理用品(とくに生理用品を今まで使っていたものから変えた場合に多い)による刺激、下着に残った尿・便、異物等によって接触性皮膚炎が起こったりします。
また、女性ホルモン(エストロゲン)には腟の自浄作用や皮膚環境を整えるのに重要ですが、加齢によって女性ホルモン(エストロゲン)が低下して、腟や外陰部に炎症が起こることがあります。
おすそがかゆい人が来たら、まず外陰部・腟内を見て(視診)、かゆい部分に何か変化がないか確認します。次におりものを採取して顕微鏡で何か原因となっているもの(とくにカンジダ・トリコモナスなど)がないか確認します。原因が感染の場合、カンジダであれば抗真菌薬を使い、トリコモナスであれば抗生剤・原虫に効く薬を使います。女性ホルモンの低下であれば、エストロゲン製剤を使います。接触性皮膚炎であれば、軟膏を調整したり、スキンケアに加えて、そうなってしまう原因を除去することが大事です。