母乳について

赤ちゃんへの栄養方法として、母乳・粉ミルクなどあります。最近では液体ミルクも登場しております。病院によっては、母乳栄養を積極的にすすめている所もあり、ユニセフでも母乳育児を成功させるための10ヵ条というものも出ており、基本的には母乳育児が国際的にも推奨されております。ただ、どうしても母乳が出なかったり、乳頭が傷だらけになっている人もいてあり、母乳育児の大変な部分もあります。最近では、産後積極的に働く女性も増えており、どうしても粉ミルクになってしまうこともあります。 ここでは、母乳の利点・欠点や赤ちゃんへの栄養方法の歴史について紹介したいと思います。

この記事のまとめ

①母乳栄養に利点と欠点がある

②赤ちゃんへの栄養方法は社会の変化とともに変わっている

③子育ては大変

母乳は、産後の時間経過とともに成分が変化していきます。最初は初乳といって混濁した黄色の液体で免疫物質・蛋白質・電解質を多く含み、赤ちゃんが免疫を獲得するのに優位になっております。徐々に成分が変わり移行乳を経て成乳となります。成乳の成分は、脂肪や糖を多く含みエネルギーが高くなっています。

母乳の利点として、赤ちゃんの栄養・免疫獲得、子宮復古(乳頭刺激によって産後子宮の回復を促すホルモンが分泌される)、ミルク代がかからない、なんといっても授乳のスキンシップにより健全な母子関係が形成されるなどあります。ただし、母乳も完璧ではなく欠点ともあり、栄養のうちビタミンK・鉄分が不足していること、母乳性黄疸が出ること、母親に感染症(HIV、HTLVなど)がある場合母乳を介して赤ちゃんにも感染する可能性があること、母親が飲んでいる薬がある場合薬剤移行すること(ほとんどの薬は移行しても濃度がごく低く影響は無視できる程度ですが、一部抗癌剤や免疫抑制剤など強い薬は注意が必要です)、乳房トラブルなどあります。栄養に関していうと、ビタミンK欠乏で出血傾向となる可能性があるので、赤ちゃんにはビタミンK入りのシロップを投与する必要があります。

赤ちゃんへの栄養の歴史をみていくと、昔から自分の子供に授乳するのが一般的でした。古代文明時代から、乳母の存在が記載されているようです。高貴な身分の人は、乳母を雇って自分の子供に授乳させていたようです。ベビーシッターが授乳もしてくれるイメージでしょうか。そして、15世紀頃の大航海時代の西洋では、貿易業務を中心として労働環境が厳しい状態となり、定期的に授乳が出来ない環境だったようです。そんな中、赤ちゃんに牛・羊の乳を与えるようになりました。ただし、牛・羊の乳による様々な問題が浮上してきて、母乳が主流に戻っていったようです。

社会背景の変化により人工乳のニーズが高まり、19世紀から20世紀にかけて、多くの人工乳の開発生産がされました。19世紀にはDryNursingと呼ばれる、小麦・シリアルをブイヨンや水で溶いたものが使用されていました。1860年代に、アンリ・ネスレ(ネスレの創始者)が小児用ミルクを開発しました。ただ、当時の人工乳は、栄養学的な欠陥が多く、衛生的な問題もあり、人工乳で育てられた児の死亡率は高くなっていました。また、日本では伝統的に産婆による自宅出産・授乳による育児が主流でしたが、1950年代から病院・産院での出産が増加するとともに、粉ミルクブームとなりました。

こうした中、1970年国連は国連が初めて人工乳の販売活動を問題に取り上げました。1974年には「ネスレは赤ちゃんを殺す」としたネスレ訴訟が起こったりしました。WHOや厚生労働省で母乳栄養推進運動が推進されました。ちなみに「母乳育児を成功させるための10カ条」が掲げられ国際的にも母乳育児が推奨される流れとなっています。だいたいの産婦人科の待合いに貼ってあるのを見たことがあるかと思います。

そして最近液体ミルクが日本でも販売されるようになりました。値段は少し高めですが、災害時にお湯が使えない状況や哺乳瓶を十分に消毒できない場面では、とても重宝されます。すぐに飲ませることが出来るので、粉ミルクのようにお湯入れて、溶いて、人肌に冷ましてという手間がないです。

自分も子供が出来て、妻が夜もおっぱいするのに何回も起きたり、眠い目を擦りながら粉ミルクを作ってあげているのを見ていると、母親の偉大さをひしひしと感じます。頭があがらないです。夜の当番でお産などで呼ばれると、だいたいの産後部屋から赤ちゃんの鳴き声が聞こえたり、授乳室は明るくなっているのを見ます。奮闘している母親に頑張れと思いながら、お産対応をしたりしています。

投稿者: すべての女性のヘルスケア

 はじめまして。私は産婦人科医として総合病院で働いております。  女性の健康上の問題があったとき、なかなか人に相談できないこともあるかと思います。たとえば、「妊活したいが何をすればいいの?」、「妊娠したかもしれないがどうすればいいの?」、「妊娠中にやってはいけないことは?」「月経の量が多いですが大丈夫ですか?」「更年期症状が気になります」など様々な悩みがあります。  日々の診療で培われた知識・経験などを活かして、すべての女性の健康上の悩みに対して手助けとなるような情報を発信していきたいと思っております。  また2児のパパでもあり子育て世代にとって有益な情報や、趣味のジョギングに関する情報なども発信していきたいです。よろしくお願いします。

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